作例墨場必携

名詩篇2(七~十四字・五言絶句・七言絶句・古詩・律詩)


銀河淡々潟秋光 缺月捎々挂晩涼
馬上西風吹夢斷 隔林煙火路蒼茫 金膽
(半切)
銀河淡々として光をそそぎ
欠けた月影が樹々に涼しくかかる。
馬上に西風が吹き夢を断ち
隔たる煙火に路はほの暗い。

黄梅時節家々雨 青草池塘處々蛙
有約不来過夜半 閑敲棊子落燈花 趙師秀
(半切)
梅の実の黄色に熟する梅雨の頃、
池の堤に緑の草が茂り
あちこちで蛙が鳴いている。
来るといった人が来ないので
夜半わびしく碁石打ちおろしたりしていると
その響きに応ずるかのように
燈火の丁字頭が音もなく落ちた。

一燈幽館菊花雨 孤枕小楼梧葉風 眞山民
(半切)
ものさびた住居のともしびのもと
菊花にふる雨をながめ、
ひとり寝の小楼に
梧葉に吹く風をきく。

雨晴階下泉聲急 夜静松間月色遅 王守仁
(半切扁額)
ひと雨すぎて、きざはしの下の泉は
音をたてて流れ、静かな夜、
松林に月光はゆっくり移る。

風江潮動月茫々 懊藹聲中夜未央
南北東西盡蓮葉 不知魚戯在何方 沈用濟
(半切)
月も朧な江上に潮さして何処からか舟歌が
聞こえる。見渡す限りの蓮葉。
魚はどこでたわむれているのやら。

秋聲不盡蕭々葉夕景無多淡々山 楊基
(半切)
草木に蕭々として秋風吹きわたり、
ほのかに煙る山には夕陽がさすのみ。

一枕鳥聲殘夢裡 半窓花影獨吟中 陸游
(半切扁額)
夢まださめやらぬ枕べに鳥の声が聞こえ、
ひとり詩を吟ずる窓辺には花影がうつる。

竹影遮窓暗 花陰拂簟涼 岑參
(半切2/3)
竹影は深く窓を掩い、
花陰は涼しく寝部屋にゆれる。
簟(テン)は竹で編んだむしろ。

人静魚自躍 風定荷更香 陸遊
(半切)
人気がなく静かな水辺で
魚がおのずからはねあがる音が響き
風が吹きおさまって蓮の花の香は
さらに芳しく辺りに広がっている。

年来腸断秣陵舟 夢繞秦淮水上樓
十日雨絲風片裏 濃春烟景似殘秋 王士稹
(半切)
秣陵は南京の地。秦淮はそこを流れる川の名。
両岸に酒楼立ち並び画舫も多く風流歓楽の
場所として古くから知られている。
腸は断つといい夢はめぐるというのは
切々たる回想。後2句は、風そよぎ
雨にけむる物わびしい春の点描。

日色射雲時弄 彩雨絲吹雪不成花 文徴明
(半切扁額)
日光が雲に射して時に美しい色彩をなし
雪に後から雨が吹きつけ花模様にならない。

夕陽千樹鳥声寂 涼月一庭花影深 李紱
(半切)
夕陽は樹々を照らして
鳥のさえずりも寂しげである。
涼月に庭の花は濃い影を落としている。

主人不相識 偶坐為林泉
莫謾愁沽酒 嚢中自有銭 賀知章
(半切扁額)
ご主人と お会いするのははじめてですが
上がり込んだのは 見事な庭があるからです
どうか お酒の心配などなさらぬように
いやいや 財布に銭はつきものですから

獨坐對月心悠悠 蘇舜欽
(半切)
たったひとりで月をながめ、
何思うこともない。

竹明風弄影荷浄露生 林希遠
(半切2/3扁額)
青々たる竹影は風に動き、
清らかな蓮花の露は香ばしい。

含風竹影淡留月 著雨蛩聲深怨秋 范成大
(半切)
竹影は風をはらんで淡く月光をやどし、
虫の音は雨中に秋を怨む如くに聞こえる。

翼翼歸鳥戢羽寒條 陶潜
(半切2/3扁額)
翼々は飛ぶ形容。寒条は冬の木の枝。
ねぐらに帰る鳥が舞い降りて
枝に羽をおさめる。

花然山色裏柳臥水聲中 范成大
(半切)
花は青山に咲いて
色は燃えんばかりにあざやかに、
柳は水声のきこえるあたりに
枝垂れている。

芙蓉零落秋池雨 楊柳蕭踈暁岸風 崔致遠
(半切扁額)
芙蓉は蓮。池に秋雨ふって蓮花散り落ち、
岸辺に暁風吹いて楊柳は物さびた姿である。

隴竹和烟淨 紅梅帯雪香 王過
(半切)
丘陵の竹には霞がたなびいて清く、
江辺の梅は雪を帯びて香ばしい。

葡萄美酒夜光杯 欲飲琵琶馬上催
酔臥沙場君莫笑 古来征戦幾人回 王翰
(半切)
葡萄の美酒 夜行の杯
飲まんと欲すれば 琵琶馬上で催す
酔うて沙場に伏す 君笑うこと莫れ
古来征戦 幾人か帰る

中秋雲淨出滄海 半夜露寒當碧天 許渾
(半切扁額)
中秋の月は雲晴れた海上にのぼり、
露寒き夜半に天空にかかっている。

芳春巳共煙花 孟夏俄驚草木長 王守仁   
(半切)
芳春己に煙花と共に尽き、孟夏俄に草木の長ずるに驚く

花對池中影 松搖風裏聲 王維
(半切2/3扁額)
花は池に影をうつし、松は風に声を発している。

中原還逐鹿 投筆事戎軒 縱横計不就
慷慨志猶存 仗策謁天子 驅馬出關門
述懐 魏徴
(半切)
隋末、天下乱れ群雄起こって互いに覇を争った。
かかる時勢に、余も筆を執って武事に従い、
群雄の間を歴遊し、天下経論の策を献じた。
其の事、未だ成就しないが、時勢を慷慨し、
事に当たるの志はなお失わない。
今や天子の恩命を添うし、
山東の地を定めることとなった。
策を杖いて天子に謁え、馬を驅って関門を出た。