作例墨場必携

名詩篇3(七~十四字・五言絶句・七言絶句・古詩・律詩)


29.9.2UP

對客開春酒 當門掃落花 汪廣洋

(半切)

或る時は来客と春の酒を酌み、

又或る時は門前で落花を掃く。

29.7.9UP

梨花淡白柳深青    柳絮飛時花満城        
惆悵東欄一株雪    人生看得幾清明 蘇東坡
(扇面)
孔密州の太守となった孔宗翰の「東欄梨花」

と題する詩に和したもの。
惆悵は悲しみなげく。一株雪は一株の白き梨花。
幾清明は一生のうちに何回清明の好時節を

こうして楽しむことができるだろうか。

29.5.20UP

昔在長安醉花柳 五侯七貴同杯酒

氣岸遙凌豪士前 風流肯落他人後

夫子紅顔我少年 章臺走馬著金鞭

文章獻納麒麟殿 歌舞淹留玳瑁筵

與君自謂長如此 寧知草動風塵起

函谷忽驚胡馬來 奏宮桃李向明開

我愁遠謫夜郎去 何日金鶏放赦回

流夜郎贈辛判官 李太白

(折帖)

むかし長安にいて、桃の花や柳の枝を見ながら酔うたときは、

王侯貴族たちとも杯をくみかわし、心意気は豪傑をはるかにしのぎ、

風流は人後に落ちなかった。あなたはまだ紅顔、わたしもまだ若者。

いろまちに馬を走らせ、金の鞭をふりまわしたものだ。

麒麟殿に文章を献納して天子のお眼鏡にかなったが、

わたしはタイマイをしいた席に腰をおろすと、

毎日、歌や舞を見物してばかりいた。

いつまでもこのように楽しくしていよう、などと君に向かって言ったり

しているうちに、あにはからんや、草が動いたとみるや風塵が巻き起こった。

函谷関はたちまち、えびすの馬の襲来に驚いた。

長安の宮殿の桃や李は、明るい方に向かって花を開いているのに。

わたしは悲しいことに、遠くに流されて夜郎に

行かなければならない。金の鶏がかかげられ、

大赦が出て私が帰れるのは、ああ、いつの日であろうか。

29.3.20UP

滿窗明月滿簾霜 被冷燈殘拂臥牀

燕子樓中霜月夜 秋來唯爲一人長 白楽天燕子樓

(半切)

燕子樓は、唐代張建封の愛妾関盼々が

旦那の死後も義理立てして住んでいた楼。

被冷は布団が冷たいこと(ひとり寝)。

29.1.29UP

三百六十日 日日醉如泥

雖爲李白婦 何異太常妻 李白贈内

(半切)

三百六十日 日李々酔うて泥の如し

李白の婦と為ると雖も 何ぞ太常の妻と異ならん。

大酒飲みの李白の翌朝の低姿勢と申すべきか…

27.12.29UP

竹外桃花三兩枝 春江水暖鴨先知

蔞蒿滿地蘆芽短 正是河豚欲上時 蘇東坡

(半切扁額)

竹外の桃花は三兩の枝、春江の水暖まるは鴨先ず知る。

蔞蒿は地を滿たし蘆芽短し、正に是れ河豚の上らんとする時。

有名な画僧恵崇の「春江晩景」の画に題した詩。

春先き揚子江をのぼって来るフグが一番美味しいらしい。

蔞蒿(よもぎ)、蘆芽(あしのめ)の時期でもある。

27.12.29UP

采藥今朝偶出遊 渓邊小立喚漁舟

未須著句悲搖落 嫩日和風不似秋 陸放

(半切)

藥を采りて今朝たまたま出て遊ぶ、渓邊に小立して漁舟を喚(よ)ぶ。

未だ句を著(つく)り搖落を悲しむを須(もち)いず、

嫩日に和風は秋に似ず。

薬草をとりに朝から出かけてみた。

谷川の岸辺で釣り舟に声をかけてたたずんでいると、

秋とも思えぬやわらかな日差し、そよそよ吹く風、

搖落(風に落葉する)を悲しむ句なぞ作る気がしない。

27.8.30UP

漠漠水田飛白鷺 陰陰夏木囀黄鸝 王維

(半切扁額)

果てしなく広がる水田に白鷺が飛び、

ほの暗い夏の木立にうぐいすがなく。

27.8.30UP

露氣蒼凉水氣清 亂藘顚倒一舟横

壮風裂竹秋江上 更有何人聽此聲 汪中

(半切)

裂竹は笛声。秋の川は蒼凉たる

露気がただよい、水気は清い。

乱れた芦の間に舟が一つ横たわっている。

風につれて水面をわたる笛の音。

27.6.28UP

萬壑樹聲満 千崖秋氣高 杜甫

(半切3/4扁額)

谷間には風が吹いて樹声満ち、

切り立った崖には秋の涼気がただよう。

27.6.28UP

我来萬里駕長風 絶壑層雲許盪胸

濁酒三杯豪氣發 朗吟飛下祝融峯 朱子

(半切)

許盪胸ーかくのごとく胸中をゆさぶる。

祝融峯ー衝山の最高峰、南岳。

万里、長風に乗じてこの山に登る。

きりたった岸壁に湧くむら雲は

我が胸中をゆさぶってやまぬ。

三杯の濁り酒に意気軒昂となり、

朗吟しつつ祝融峯をくだるのである。

27.4.19UP

畫橋南畔倚胡牀 秦觀

(半切扁額)

画橋は美しい橋。胡牀はベンチ。夕涼みの情景。

27.4.19UP

榴花映葉未全開

槐影沈沈雨勢来

小院地偏人不到

満庭鳥迹印蒼苔 司馬光

(半切)

榴花はざくろの花。槐影はえんじゅの木陰。

小院地偏は奥まって偏僻な自分の書斎。

隠居後のある夏の日、ひとり書斎で

眼前の光景をうたったもの。

27.2.21UP

返照入閭巷 憂來誰共語

古道少人行 秋風動禾黍 耿洪源 

(半切扁額)

返照は日影、斜陽ともいう。

閭巷は村里。古道はさびれた路。

芭蕉の「この道や行く人なしに秋の暮」の情景。

27.2.21UP

古樹夕陽盡 空江暮靄收

寂寞扣舷坐 獨生千里愁 權德輿

(半切)

日がとっぷりと暮れて、水面に立ち込めていた

夕もやもいつしか消える。ひとりふなばたを

たたいていると、人知れず郷愁がわいてくる。

木末芙蓉花 山中發紅萼
澗戸寂無人 粉粉開且落 王維
(半切扁額)
辛夷(こぶし)の花さく山中の堤に
谷川に臨んで家が一軒あるが、
人影はない。真っ赤な花が
咲いては散り、また咲いては散る。
芙蓉といえば普通は蓮だが、
木末(こずえ)に咲くとあるから
こぶしの花のほうである。

走馬西来欲到天 辭家見月兩囘圓
今夜不知何處宿 平沙萬里絶人烟 岑參
(半切)
西征に従軍し果てしなき砂漠を
天に到ろうとするかのように
来る日も来る日も馬で行軍する。
家を出てから満月を二度見る。

桃花似錦柳如烟 禪林類聚
(半切扁額)
美しくのどかな春景色

四月清和雨乍晴 南山當戸轉分明
更無柳絮因風起 唯有葵花向日傾 司馬光
(半切)
當戸轉分明:
ここから眺める南山の姿は
すっきりとしている。
柳絮:柳のわた
葵花:ひまわり

萬里平原滿州 風光濶遠一天秋
當年戰迹留餘憤 更使行人牽暗愁 伊藤博文
(半切扁額)
濶遠はひろびろしているさま。行人は旅人。
暗愁は暗い悲しみ。この詩の翌日ハルピン
で凶徒に襲われ殺害された。

寒風拂枯條 落葉掩長陌 陶潜
(半切)
枯條は枯れた枝。長陌は長くつづいたみち。

餘生欲老海南村 帝遺巫陽招我魂
杳天低鶻没處 青山一髪是中原 蘇東坡
(半切扁額)
自分は余生を、左遷された
海南島で終わろうとしていたが、
はからずも皇帝のお許しで
内地に帰ることとなった。
帰還の途次、遥かな彼方、
鷹らしい鳥影の消えるあたりに、
髪の毛引いたような緑の地平線がみえる。
あれが懐かしい中原であろう。

黒雲翻墨未遮山 白雨跳珠亂入船
巻地風来忽吹散 望湖樓下水如天 蘇東坡
(半切)
翻墨は墨をこぼしたように。
白雨は夕立ちの雨の形容。
水如天とは湖水がはてしなくひろがっているさま。
夕立ちの壮観を写している。

携杖来追柳外涼 秦観
(半切扁額)
杖をたずさえて来たり追う柳外の涼。

野店桃花紅粉姿 陌頭楊柳緑煙絲
不因送客東城去 過却春光總不知 逍子昻
(半切)
野店はいなかの茶店。陌頭はみちばた。
一室に閉じ籠っていたので、
帰る客を送って街にでなかったら、
この春光も知らずに過ごして
しまったこてであろう。

寒夜客来茶當酒竹爐湯沸火初紅
尋常一様窓前月纔有梅花便不同 杜来
(半切扁額)
寒い夜、客が来た。何の用意もなかったので
酒の代わりに茶をたてて出すことにした。
竹で囲った炉には沸いてきて
火もよくおこった。
窓前の月はいつもと同じだが、
折もよく梅の小枝がさしかかっているので
風情が一段と違っている。

落盡青松百草深爐鷺烏斜日叫寒林
可憐一片西湖土埋却英雄未死心 馬存
(半切)
宋の名将岳王の墓は西湖のほとりにある。
もう目を蔽う荒れ果てようであった。
さぎやからすが夕陽を浴びて寒林に鳴く
荒涼たる光景。

林外雪消山色静窓前春浅竹聲寒 韋振句
(半切1/2扁額)
林外雪消えて山色静に
窓前春浅く竹声寒し

今来古往事茫々石馬無聲抔土荒 星巖句
(半切1/2)
古今往事さだかでなく、狛犬に声無し。
抔土は一すくいの土で、墓の意。
茫々たる様。

閑中日月病中身 寂寞相求有幾人
莫怪門前可羅雀 詩家所得是清貧 元好問
(半切扁額)
離職して病身をいたわる自分には
話し相手もいない。
寂しく門前に雀羅を張っているが
詩人はそもそも清貧が取り柄なのだ。

半高春水一蓑烟 抱月懐中枕斗眠
説與詩人休問我 英雄回首即神仙 黄春伯
(半切)
竹竿半分ほどの浅い川に小船を浮かべ、
月を抱き北斗七星を枕にして眠る。
現代の皆さん、怪しむなかれ、英雄といったとて
角度を変えてみれば神仙である。
本質に変わりはないのである。